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ecoの映画日記。(他のことも書いたりする)

by eigakyo

「カルテルランド」とベニチオ・デル・トロ、他関連作品(原題:CARTEL LAND)

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【悪の法則が作り出す、悪の連鎖を映すドキュメンタリー映画】

ネタバレでいきますので未観の方はご注意ください!

ここんと、映画を観れば麻薬カルテルとベニチオ・デル・トロに当たる、という状況です。

「マイボディガード」2004'
「ノーカントリー」2007'
「トラフィック」2000'
「悪の法則」2013'
「エスコバル」2016'
「ボーダーライン」2016'


観た映画、今となってはみんな繋がってます。

この「カルテルランド」は、そんな映画群が描く今の麻薬カルテルを映し出したドキュメントです。

実際の最前線撮影ゆえ、信じられないような映像が続きます。

この監督は一体どれだけ捨て身でこれを撮ったのか、ただただ驚愕します。

実際の人々の顔、実際の銃撃戦、実際の死体…。

それを制作総指揮キャスリン・ビグローで2016年アカデミー長編ドキュメンタリー賞ノミネートされました。
(受賞は「サウルの息子」になりましたが。)


【関連作品】

これを観る前に3月公開の「エスコバル」、そして先々週公開「ボーダーライン」という映画がありました。
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そしてこう来ると思い出さずにおれない「トラフィック」。
この3作全部ベニチオ・デル・トロ出演で、彼は最近麻薬カルテルものに出ずっぱりです。

彼自身はプエルトリコ人なのに、遂にはチェ・ゲバラも演り、すっかりメキシコ人になっちゃいましたね。
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【今に続く麻薬カルテルの現状】

2000年の「トラフィック」は麻薬カルテルと消費者までの全容を見せたソダーバーグの意欲作。
救いのあるラストが忘れられない映画です。

麻薬を作って出荷するメキシコ最前線とメキシコ警察、それを取り締まるアメリカ国境のサンディエゴ警察、そして麻薬が行き渡る一般アメリカ人という、3つのストーリーを合体した逸品でした。

あれから16年、映画を観ているに、麻薬カルテル事情は目まぐるしく変化してきたようです。

「エスコバル」は80年代ほとんどのカルテルを仕切っていたコロンビアの麻薬王の話。
(これを演じるのもベニチオ・デル・トロ!)

エスコバルが93年に死ぬと、カルテル勢力はコロンビアからメキシコに移ります。

それで、今、トランプ大統領候補が言っている「メキシコ国境に壁を作れー!」っていう現状になっていきました。

メキシコとの国境地帯アリゾナに、長〜い柵がありますが、その地下に幾つものトンネルが掘られ、麻薬はそこからアメリカ国内に運ばれ続けているわけで、柵なんか意味ないみたいです。
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そして2014年、アメリカではコロラド州を始め、ワシントン州でもマリファナ合法化。
このドラッグ巨大産業を合法化で弱体化する策です。

で、「ボーダーライン」は今のアメリカ政府とメキシコ麻薬カルテルの攻防戦線の話。

(↓原題SICARIOとはカルテルに雇われた冷酷な殺し屋の意。
「ノーカントリー」のシガーみたいやヤツのことですね。)
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CIAのジョシュ・ブローリン(ノーカントリーにも出てた)。
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手段を選ばず麻薬撲滅に乗り出しているアメリカ政府。
協力するのは謎のコロンビア人ベニチオ・デル・トロ。
つまりコロンビアがアメリカに協力している。
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しかし謎のコロンビア男の動機は…。

家族を殺された恨みを晴らす目的と共に、コロンビアの司法側も元は麻薬カルテルの甘い汁を吸っていた、その利益を取り戻すのも動機のひとつ。
善悪相まった存在。

そこで今作「カルテルランド」に合点がいく。

このドキュメンタリーが描くのは、善と悪のボーダーラインなんかもはやなくなっちゃった現状。
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【救いようのない「カルテルランド」】

映画は、犯罪組織の横暴から家族を守るため立ち上がった町医者ホセ・ミレレスという勇敢なじいちゃんを追っていきます。
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自警団を立ち上げ、被害に遭っているメキシコの町を回って自警するのを助けていきます。
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ドクターミレレスは民衆の味方、まさにマカロニウェスタンのイーストウッドさながらの英雄になっていく。
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しかし!
なんということか!

自警団が勢力を強めるにつれ、メキシコ政府が自警団を取り込み内輪揉めを誘発して、ミレレスが邪魔になり、暗殺未遂の末、刑務所に幽閉してしまう。
今もドクターミレレスは獄中なのです…。

(↓政府に取り込まれた自警団。
犯罪組織を制裁する目的だったのに、法の傘下で今度は自分たちが略奪と殺人を繰り返していく。悪の連鎖…)
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何という出口のない、救いのない現状か。


あるメキシコ庶民の言葉がこれを表している様。

「我々は自分たちを守ってくれるものなら自警団でも犯罪組織でも政府でも何でもいいんだ」

貧しさの中で、生活を守るため、正義も悪も、法も無法ももはや関係ない。

とにかく莫大な利益を生む麻薬産業に、政府でさえほぼほぼ公に加担してる。

正義のため立ち上がったドクターミレレスみたいな英雄でさえいとも簡単に見捨てられていく。

正義は一体どこに?
月並みですが。

そしてそれはどこにもないというこの「カルテルランド」。

正義も信念も人情も通用しない。
まさに「ノーカントリー」。

安全で安心な生活をしている我々には理解不能な過酷な現実、「カルテルランド」です。
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by eigakyo | 2016-05-10 15:28