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ecoの映画日記。(他のことも書いたりする)

by eigakyo

「エクソダス」原題:EXODUS

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待望のリドリー・スコットです!

と思ったらなんと今回は、聖書の歴史スペクタクルエンターテインメント…!

リドスコじゃなかったらこの映画、観に行かなかったでしょう。

でも期待しなかった分、結構おもしろかったです(笑)。


冒頭は、エジプト軍が周辺部族を制圧していく様子。

「グラディエーター」のような迫力ある戦闘場面で掴みは上々です。
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しかしこういう場面、馬を駆って剣を振り回し弓矢を浴びせて原始人のごとく無差別な殺戮…を見る度、馬が可哀想!!!

人間の支配欲のために駆り出されて、歴史上どれだけの馬が犠牲になってきたのでしょう…?

早くも脱線しました。
でも馬はいい迷惑です。

本題に戻りまして、
最盛期のエジプト文明が建築されてる様子、「十の災い」なんかがリアルなCGで再現される映像は見応えありました。
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【モーセの物語】

「エクソダス」(EXODUS)は「出エジプト記」のこと。

ご存知、モーセの物語です。
いえ、ご存知、というのは違うのかもしれません。
今この映画を観る多くの若い人々は「モーセ」とか「十戒」なんて知らない人が大半なのでしょうね。

「エクソダス」の会場に入ると、年齢層はかなり高め。
恐らく皆さん、チャールトン・ヘストン主演の「十戒」も観ていることでしょう。
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【ストーリー】

ストーリーは原書通り。

紀元前1300年のエジプト。
エジプト人として育てられたヘブライ人のモーセが、追放と放浪を経てやがて奴隷解放のリーダーとしてヘブライ人をエジプトから連れ出すお話。

現代風に言えば、アイデンティティーの物語です。
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神の数々の奇跡をどう描くか、その辺りどうしたのかなという興味が最もありました。

「エイリアン」「プロメテウス」のリドスコのこと、想像に難くないわけですが、

奇跡に関しては科学的に説明可能な“自然現象”と、“偶然”の奇跡的な重なりで堂々収拾。

信仰の人モーセに関しては、運命に抗い、迷いながら人生を切り開く現代人、そのためには神をも自分で作る!

リドリーらしいです。

「神」として出てくる化身は男の子の風貌。
それは「神」なのか、
はたまたモーセ自身の中に作り上げた神「自分自身」なのか。

露出を絞った不穏な映像は、どこか「プロメテウス」の異星人を思わせます。

ああ、リドリーらしい。
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「ヘブライ人(イスラエル人)は“神と格闘する者”という意味」だという意味深な台詞が出てくる。

劇中モーセは常に“神”と対話を通して格闘している。
時に敵対し、時に譲歩し合い、和解を繰り返しながら。

その様は自らの内なる声と格闘しているが如く。

しかし、解釈の余地も十分残した描き方は、「プロメテウス」とは違い一応聖書を扱うからにはの配慮なのでしょうね。


【キャスト】

↓モーセ役は、文句なしのクリスチャン・ベール。
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ルックスが合わなかろうが、他に誰が偉大なモーセ役を演じられるでしょう?
ただこれは演出の方ですが、モーセのルックスが冴えないんですよね。
エジプトにいた頃は有能で精悍なんですけど、その後は髪の毛もボサボサ、顔色も悪くみすぼらしいかんじ。
一応ヒーローなんだからもっとカッコよくしてほしかった。
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ま、荒野を何十年も流浪するわけだからそういう演出なのでしょうか?


↓時のファラオ、ラムセス役はジョエル・エドガートン。
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モーセと比べて能力不足で邪悪な存在ですが、本当に邪悪なのは母の方で、実はわりと単純で肝っ玉の大きい男をエドガートンはよく演じてました。
この俳優、「グレートギャツビー」のトム・ブキャナン役でしたよね!


↓ファラオ役(父)を、なんとジョン・タトゥーロ!
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スクリーンに出てくる度ジョークとしか見えなくてニヤニヤしてしまいます。
でも慈愛の表情なんかとても良くて、タトゥーロも円熟の域ですねぇ。

(どうしても彼のイメージはこれです(笑)。↓「ビッグ リボウスキ」より。ボーリングでストライクを出した時のポーズ)
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↓ファラオの邪悪な母にはシガニー・ウィーバー。
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僭越で尊大で利己的な母、見どころが少なかったのが残念!
思えば「エイリアン」以来のタッグです!

↓ヘブライ人の長老役にベン・キングスレー。
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彼は外せない人です!
選ばれた民の威厳とプライドを体現できる俳優なわけです。
しかしシガニーと同様魅せる場面がもっとあったら良かった!


【トニー・スコットに捧ぐ】

この映画を“観終わって”、涙がブワっと溢れ出てしまいました…。

なぜって、エンドクレジットに、「この映画をトニー・スコットに捧げる」と出てきたから。

トニー・スコットはリドリー・スコット監督の弟、3年前に自殺しました。

その頃リドリーは「悪の法則」を撮っていて、次に「エクソダス」を作ることにしたのはきっと、トニーに捧げる映画を作りたかったからなのかなと、なんか納得してしまいました。
(右がリドリー、左がトニー)
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この映画は“兄弟”の物語。

モーセとラムセス。
モーセとアロン。(ヨシュアも)

兄弟にはいろんな歴史、愛情と確執があるでしょう。

単純に想像すればラムセスがリドリー、モーセがトニー?

作風を見てくれば、芸術家肌の正統派が兄リドリーです。
(ブレードランナー、エイリアン、グラディエーターetc)

一方弟トニーは大衆受けするスタイリッシュな映画を撮ってきました。
(ハンガー、リベンジ、トップガン、トゥルーロマンス、ドミノetcどれもこれも好きな作品??)
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偉大な兄を陰日向で支えてきたのかなぁ…?

想像は広がりますが、リドリーがこの映画のどの形に自己等を投影したのかは分かりませんけれど、弟への思いを込めたのは容易に想像がつきました…。
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by eigakyo | 2015-02-10 14:20